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不思議だったのは、彼がライブ映像で観測している間は、その動きがますます彼の感情に反応するようになったことだった。丈晃がその動きを観測するたび、自分の感情が影響を及ぼしていく。彼が苛立てば「怒り」の量子は暴れ、彼が安らげば「喜び」の量子がより輝く。実験が進む中、彼の感情そのものが反映されるかのように量子たちが反応する様子に、丈晃は戦慄した。
「まるで、自分の心を覗かれているみたいだ…。」
***
観測が進むにつれ、丈晃自身に異変が起こり始めた。実験の合間に、彼は気がつくと「喜び」「怒り」「無感情」といった感情に囚われるようになった。
喜びの箱を見ているときは、得体の知れない幸福感に包まれ、時にはその幸せに涙することすらあった。怒りの箱を観測していると、理由もないのに苛立ちが募り、その苛立ちがこらえきれなくなり、たびたび身近にあるものに、その怒りをぶつけた。無感情の箱を観測すると、丈晃自身も何もやる気が起きなくなり、全く何も感じなくなる瞬間すら訪れた。
そして。丈晃にとってすべての感情が混ざった箱を観測している時が一番の恐怖だった。見た時に感じていた感情が一気に増幅し、混乱と恐怖に支配されるのだ。
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