人間偏差値100なんて

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人間偏差値100なんて

 人は皆、完璧ではないから面白いのだ。反対に、何でも出来る完璧な人はそうそういるものでは無い。そう思っているうちの一人は、私だ。  けれど、学校では全てにおいての偏差値100だと騒がれている⋯⋯全く、訳の分からない事を。 だから悩みなんて一つ言っただけでも、相手側からしたら嫌味の様に思われてしまうのだ。とても虚しい⋯⋯。  だから、学校ではいつも笑顔で頼れる優しい子を演じているうちに”天使みたい”と言われるようになった。偽りの姿を褒められるくらいなら、演じていた方が楽だと思う様になった。  でもそれが返って、自分の中では日に日にストレス化していって膨張し始めている。そんなある日の事。  美術部に所属している私は、絵の締切が今日までで20時までかけて仕上げをしていた。そして疲れ果てながら家へと歩いていた時⋯⋯気が付くと歩道ではなく道路を歩いていた私は、一台の大型トラックに跳ねられてしまった。痛みも辛さも感じない。  あぁ⋯⋯なんて心地良い感覚なんだろう。ゆっくりと重くなった瞼を閉じた。そして、私は十七歳という若さでこの世を去った。 ☆ 「んっ⋯⋯う⋯⋯ん」  誰かにトントンと叩かれ目を覚ますと、私はふかふかのベッドに横たわっていた。起き上がると、羽の生えた一人のおじいさんがお茶を入れていた。 「あっ、目が覚めたようじゃのぉ⋯⋯」  私に気が付くと、出来たてのお茶を運んできてくれた。 「⋯⋯ありがとう、ございます。ここって⋯⋯?」  そう言いかけると、微笑んだおじいさんは「天空じゃよ」とあっさり言った。 「え⋯⋯いやいやそんなこと⋯⋯」  と、窓から外を見ると⋯⋯周りはどこを見ても雲一色だった。その上を数人の人が歩いていた。その姿に、転生した事を認めざるを得なかった。 「この世界の人は、人間? なんですか」  そう聞くと、おじいさんはうーんと考え込んだ。 「そうじゃのぉー、人間だがただの人ではない⋯⋯いわば天使ともいうかのぉ」 「な、なるほど」  地上であんなにも天使みたいと言われていた私が、本物の天使へと転生してしまうなんて⋯⋯何とも複雑だ。けれど、とても豊かな場所に転生することが出来て安心感でいっぱいだ。天使になれて、私は心から嬉しい。外へ出て、美味しい空気を肺いっぱいに吸い込む。そして、花歌を歌いながら空を羽ばたいている。ただの人間だった頃とは大違いの開放感だ。  仲の良かった友達と会えなくなるのは悲しいけれど、この新しい地で新しく生きるのだ。 ──翼を羽ばたかせて私は、今日から天使になる。  
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