パヴァーヌの中の王女

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 年を重ねると、お互いの立場がわかるようになってきます。それでも二人は会うことをやめられませんでした。  日中は人の目がある。  二人は夜、皆が寝静まった後にこっそりとホールで会うようになります。毎日から、一日置きに。3日置きに。会える時間は少しずつ減っていきます。  二人はやはりダンスをし、そして、手を取り合いました。見つめ合いました。一瞬が永遠のようにも感じ、一方で、羽のように時は飛んでゆきました。  エリナは愛らしい少女から美しすぎる娘へと成長し、クイルは可愛らしい少年からたくましい男性へと変貌を遂げました。  二人の関係も、もはや、楽しい遊び相手ではなく、真剣に想い合う仲に発展して行きました。  二人はやがて見つめ合うだけでは足りず、抱き合い、頬を寄せ合い、そして初めて口付けを交わしました。  それはとてもとても甘い、とろけるような感覚でした。 「ねえ、私の想いがわかって?」 「ええ。わかりますとも。僕と同じ想いでしょう?」 「正解よ!」  二人は気持ちを確かめ合うように、何度も何度も口付けをしました。  好きな相手が自分と同じように想ってくれるのは、なんて素敵なことでしょう。  二人は会うたびに夢のような時間を過ごしました。  どこかでわかってはいました。  身分が違いすぎると。  けれど、そんなことさえ気にならないほどに二人は恋に溺れていました。  越えられない壁はないはず。  二人でいればきっとなんでもできるはず。  エリナはいつしか17になっていました。  そんなある日。  二人がいつもと同じようにダンスをし、抱き合い、見つめ合い、口付けを交わし合っていた時でした。  神が悪戯にため息をついてしまい、クイルは誤って口付けをエリナの首筋に落としました。  エリナの白い首筋には赤い密会の跡がつきました。  
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