しゃししゅしぇしょ

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しゃししゅしぇしょ

 ユウジは私に言った。 「このミニロトが大当たりすれば、母さんの手術費用をまかなうことができる」  ユウジはこうも言った。 「サチとの結婚資金に化けることを願って買ったやつだからな……手はつけられないや」  ユウジはさらに言った。 「まとまった金さえあれば、母さんは手術を受けられるんだ。金曜日までに病院側へ返事をして入金しないといけないんだ。サチには聞かせたくなかった話だ」  ユウジが止まらない。 「ポンとまとまった金がふいにでてこねぇかな……そんな都合のいい話あるわけないか。  母さんは難病指定されてずっと苦しんできたんだ。それがやっと治せるって目前まできたのに人生は残酷だ。金がねえ。  宝くじだって賭け事と一緒だ。当たる約束もないのにそれを待ったってしょうがねえ。それにミニロトは来週の火曜日発表だ。あぁぁぁ、間に合わない」  あの、ユウジ?  ロト6やロト7だってあったじゃない? 「あぁ間に合わない。金がない。俺が死んで保険金を手術費用にあてればいいのか! いや入金が遅いからやっぱり間に合わない。俺はサチを幸せにもできないのかー」  何度かユウジと目が合ったのは気のせいだろうか。  なんとなくね、なんとなくなんだけどね、いつか私はこういう男にお金を渡しちゃうんじゃないかって思ってたんだ。  その相手がユウジであって、そのタイミングがいまってことなのね。 「ユウジ……銀行行こか。少しくらいなら渡せるよ」  ユウジは泣き腫らすほど腫れもしない顔をこちらに向けて大声で私に言った。 「ありがとう、シャチ!」  前歯がね、少しすきっ歯だから。
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