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骨密ウォーター
説明するまでもなく、ユウジとはその日のうちに連絡がとれなくなった。
自分のためにと蓄えた貯金のうちの1/20の額、つまりは50万円を私はユウジに手渡した。
思いの外少なすぎる額に戸惑いを隠しきれないユウジは「足らない分をクレジットで……」と言い出したからキッパリとお断り。
「クレカは一枚も持ってないの」
ユウジとの日々は幸せに満ちていたぶん50万円なんて安いものだわ。それでもね、やっぱり好きだったからズルズルむしり取られながら絆を結んでいくのかなって思ったんだ。
なのに私の前から消えた。
こんな紙切れ一枚残して消えた。
私を金づるにしたってお母様が元気だったって、嘘ばっかりだったって、私を好きでいてくれてたらそれで良かったのよ。
さて、過去に引きづられてても仕方がないからミニロトの結果を確認して、この紙ともサヨナラしよう。
「おめでとうございます!
4等です」
私は千円札を受け取った。
なんか腹が立つ。
ここはゼロか1等でしょうよ。
中途半端なところがユウジらしいわね。腹が立ったらお腹が空いたわ。この千円で贅の限りを尽くしたトッピングで牛丼を食べよう。
ちょうど近くにチェーン展開している牛丼屋さんがあったので私は中に入り、メニューをとる。
今の時代、注文はタッチパネル形式になっており、私がメニューだと思い掴んだものは、一冊のパンフレットだった。前のお客さんが置き忘れていったようだ。
なんの気無しに開いてみると、そこにはユウジがいた。
『関節の痛みなんてなんのその。飲めば分かるさ骨密ウォーター』
透明な液体の入ったペットボトルを片手に満面の笑みを浮かべるユウジが、コウジと名乗りパンフレット内にいる。
これって指名手配書みたいなものよ。よくも顔晒せるもんだわ。
すきっ歯は治していないし本人に違いない。
ひと呼吸おいて、私はこの運命のパンフレットに感謝を寄せた。そして、警察にとられる前にユウジだかコウジだかどっちでもいいけど、この男を捕獲する計画で頭が満たされていくのを感じた。
待つだけの一年から今度は追う一年になるのね。
(利子も含めてきっちり回収)
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