第一章 悪魔使いがおりました

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「……私は、べつに貴族になんかなりたくないもん。アイラみたいにこの通りに店を出して、ずっとニアメで暮らしていきたい」 「まあまあ。私は婚期を逃して、寂しく独り身の余生を送る年増ですよ。私なんかを手本にしてはいけませんわ。お嬢様は美人ですから。素敵な旦那様をつかまえて、幸せな家庭を築いてくださいまし」  ムムウ。とパルフェは唇をとがらせて不満を表明する。  まだ幼いパルフェには。  自分が誰かと結婚して家庭を持つなど、想像の範囲外だ。  それよりも自由で楽しい今の生活をずっと続けていたい。 「私、裁縫は得意なのよ。アイラの弟子にしてよ」 「上得意様を弟子にしてしまったら、私の稼ぎが減ってしまいます。さあさあ。嫁ぐにしても商売を始めるにしても、勉強は不可欠ですわよ。『貴族の商売』は失敗の代名詞ですから。世間知らずに商人は務まりません。生地や宝飾品の仕入れも、土地柄や流通経路で値段が変わってくるのですよ。どんな商売を始めるにしても、地政学は役に立ちます」 「ホントに?」 「もちろん。アスランさんに訊いてごらんなさいな」
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