14人が本棚に入れています
本棚に追加
「……私は、べつに貴族になんかなりたくないもん。アイラみたいにこの通りに店を出して、ずっとニアメで暮らしていきたい」
「まあまあ。私は婚期を逃して、寂しく独り身の余生を送る年増ですよ。私なんかを手本にしてはいけませんわ。お嬢様は美人ですから。素敵な旦那様をつかまえて、幸せな家庭を築いてくださいまし」
ムムウ。とパルフェは唇をとがらせて不満を表明する。
まだ幼いパルフェには。
自分が誰かと結婚して家庭を持つなど、想像の範囲外だ。
それよりも自由で楽しい今の生活をずっと続けていたい。
「私、裁縫は得意なのよ。アイラの弟子にしてよ」
「上得意様を弟子にしてしまったら、私の稼ぎが減ってしまいます。さあさあ。嫁ぐにしても商売を始めるにしても、勉強は不可欠ですわよ。『貴族の商売』は失敗の代名詞ですから。世間知らずに商人は務まりません。生地や宝飾品の仕入れも、土地柄や流通経路で値段が変わってくるのですよ。どんな商売を始めるにしても、地政学は役に立ちます」
「ホントに?」
「もちろん。アスランさんに訊いてごらんなさいな」
最初のコメントを投稿しよう!