第一章 悪魔使いがおりました

8/19
前へ
/24ページ
次へ
「分かった。ありがとう。仕事の邪魔してごめんなさい」 「いえいえ。いつでもいらしてください」  また来るから。と手を振って、パルフェは店を出ていく。  軽い足取りで元気よく去っていく姿を、アイラは窓越しに見送った。  実を言うと、同じ女として、アイラはパルフェの気持ちがよく分かった。  貴族や王族の婚姻は一族の命運を左右する大事であり、個人の希望は反映されないことがほとんどだ。たいていは親や本家が勝手に決めた相手と結婚することになる。  それに、貴族の女は子供を生むための道具、と考えられている。衣食住に困ることはないし、雑事はすべて家政婦や執事がこなしてくれるが。常に夫をたてて、後ろに控えていなければならない。気軽に出かけることはできないし、貴族同士のつき合いにも気を使う。  男は自由に道を切り開いていけるが、女は家でじっと待つだけ。自由になることなど、あまりない。  アイラはそれが嫌で、あえてこの歳まで独身できたのだ。  この選択が正しかったのかどうかは分からないが。  少なくとも後悔はしてない。商売もそこそこ順調だ。  アイラは少し自嘲気味に笑ってから。  奥の作業場に戻って、仕事の続きを始めた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加