序幕 いんびじぶるおーくしょん

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先日よりも身なりが崩れている。 サンダルにボーダーのポロシャツを着てつばつきの帽子を被っていた 察するに、この辺りに住んでいて買い物に来た感じなのだろう そんな観察していると、バッタリと目が合ってしまった 男は少しムッとした顔をしてまた徘徊し始める そしてある程度店内を物色した後、チューハイとつまみ数点をレジに置いた 「にいちゃんさっきからチラチラ見てるけど、何?」 やはりバレていたか。僕は苦笑いしながら男の目を見つめ答えた 「いえ、以前不手際があり申し訳無かったので一言謝罪したかったんです。すみませんでした」 何故か思ってもない事をスラスラと言えた自分に驚いた 男は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしていたが、気を良くしたのか饒舌に話しかけてくる 客もいなく暇だったので少し相手をしていたが、とてつもなくどうでもいい話を嬉しそうに語った。 どうやら今日はデートの予定があったらしいがすっぽかされたらしい。しかも一月も前から夕食の予約まで入れた入念さだったという しょげた顔をして話す男がだんだん可哀想になってきた僕は、ホットスナックのチキンを一つ袋に入れて手渡した 「これ、僕からです。良かったらどうぞ」 「え、いいのか??わりいな」 「嫌な事があったらいい事もないと割に合いませんからね!まあデートの穴埋めにはならないですが」 「いやいや、こうやって話聞いてくれてこんなんまでくれるだけで嬉しいわ! 実は兄ちゃんの事は前からよく見てたんだけどよ…いつもオドオドビクビクしてなんかイラつく奴だと思ってたが、いい奴だったんだな」 「え、そんな奴だと思われてたんですか!ショックです…」 「カカカッ。まあまた話聞いてくれや。えーと、名前」 胸のネームプレートを見ようと目を細める男に、僕はハキハキと答えた 「僕の名前は、内海賢助です」
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