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1.内海 賢助
思えば…過去を遡れば、後悔の元にはいつもこの感情が邪魔をしていた
小学校の時に大好きなタレントが学校に来た。タレントが帰る前、列に並べば握手出来るという機会を設けてもらったのに僕は並ばなかった
中学校の時初恋の女の子と帰り道で偶然一緒になり女の子から買い食いを誘ってくれたのに、僕は断った
高校の時友達が紹介してくれた女の子とデートに行くことになったのに、デート直前猛烈な下痢に襲われ行けなかった
チャンスを逃した時、いつもその「臆病」さが僕の前に立ち塞がった
あと一歩踏み出せば未来が変わってたかもしれないのに
上がる心拍数は足を竦ませた
それが今の内海賢助を形成した核となる感情だった
だけど僕は漸く、それを切り捨てたーーー
その結果、自分とは対照に位置する人と仲良くなれた
不思議と胸にあった緊張と恐怖はどこにもなく、人の顔色を伺い生きることを必要としなくなった
何かから解き放たれたような、自由な感覚
それが齎すものは僕にとって未知のもので
何よりも渇望した未来だ
僕の人生は、ここから始まるんだと…自分の中にあった何かが回り始めた
「内海君最近変わったね!なんか堂々として来たね!」
迫田君が急にそう言ってきた
「そうかな。ちょっと考え方を変えたんだよね」
「そういうのって大事だよね!自己啓発っていうのかな。少しの思考の変化で事態や状況が大きく変わる事もあるからね」
僕にとって一番大きな変化といえば、彼への嫌悪感だと思う
以前までは何も気にならなかった言葉がやけに嫌味に聞こえる
彼自身そんなつもりは全然ないのだろうが、立場を考えるとどうしても上から物を言われてる気がしてならなかった
「バックヤード行ってくるからレジよろしくね」
「わかった!」
少しでもこの黒いモヤモヤを晴らしたくて
この悪意を膨らませたくなくて
僕は彼から離れたかった
静かなバックヤードで一人、いんびじぶるおーくしょんについて考えた
やはりあのサイトは本物だ…
とりあえずは、自分の中にあった最も厄介な感情を処分することができた
次は出品しなくても、まだ金がある。入札が出来る
考えたら、見えないものなら才能とかも買えるって事かな…そんなものが買えるなら人生は思い通りだ…
今までろくに欲しいものがなかったのに、あのサイトの中には欲しいものだらけだ
早く帰って色々検索したいな。と思っているとレジから呼び出しがかかった
なんだよ…鬱陶しいなぁ
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