1.内海 賢助

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そして翌日ーーー 目覚めると、やたらと肌のハリがいいように思えた いつもは燻んだ土くれのような肌なのだが今日は卵のようにツヤツヤしている まさかもう「魅力」の効果が表れたのか? 歯を磨きながら鏡を見てみるが、それ以外にらしい変化は見当たらなく、肌のハリも思い過ごしかもしれない それに、いんびじぶるおーくしょんは目に見えないものを買うサイトなのだから容姿を手に入れることは少しおかしい やはり気のせいだろうか… しかし世界の見え方は明らかに変わっている 家を出て日光を浴びると、まるで太陽が栄養を注いでくれているかのように心地が良い 朝がこんなにも清々しく感じたのは生まれて初めてだ。毎日朝が憂鬱でしか無かったのに… 期待と希望が大きく、バイトに行くのが楽しみになっていた僕は時間に余裕があるにもかかわらず小走りでバイトに向かった 「おはようございます!」 多分、他の人達はビックリしただろう。今迄したこともないくらい元気な声で挨拶したのだから だが彼だけは変わらず、挨拶を交わして来た 「おはよう内海君!今日はなんだか元気だね!?」 相も変わらず憎いくらいのスマイルで話しかけてくる迫田君 フラットな気持ちで接しなければと心に言い聞かせ迫田君に話しかけた 「なんかね、身体が軽いんだ。ぐっすり寝れたからかな」 「いいね!本当に睡眠は大事だよ!寝てないと頭が働かないしね。僕も毎日11時過ぎには寝てるんだ」 「そうなんだ!」 心底どうでも良かったが愛想笑いしながら適当に躱しバックヤードに向かった バックヤードに入ると、段ボールを片付けているアセンちゃんがいた 「おはようアセンちゃん」 「オハヨゴザイマス」 僕は暫くアセンちゃんの顔をまじまじと見つめていた アセンちゃんは怪訝な顔でこっちを見ながら尋ねる 「何?」 「え?何って…何も」 「早ク仕事シテネ」 「あ、はい…」 内心どこかで良い反応を待っていた僕は少し恥ずかしくなり急いでロッカールームに入り着替えた またも鏡を見て頬を触ってみた やはりハリがあるように感じるんだけどな… 「魅力」…ハズレだったか??
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