序幕 いんびじぶるおーくしょん

4/11
前へ
/39ページ
次へ
ん…んん… どうやら眠ってしまっていたようだ。器用にも、パソコンの前で椅子に座ったままずれ落ちることもなく… ふと、パソコンのディスプレイに目をやると見知らぬサイトにアクセスしていた 「なんだこれ…勝手に開いてたな…」 パソコンをシャットダウンし、時計を見るとバイトの時間まで残り僅かだった 「やば!遅刻する!!」 急いで服を着替えバナナ一本を頬張り家を出る バイト先までは走って10分程なので急げば間に合う 息を切らしながら、必死に走る自分がガラス張りの壁に映る 何を必死になっているのか その理由もわからずただひたすら走る 責任感や使命感ではない ただ遅刻して陰口を言われるのが嫌なだけだ 一体人には自分はどんな人間に見えているんだろう そんなことが気になって仕方がない小心者の自分に、ほとほと嫌気がさす 「おはようございます!!」 なんとか間に合いバックヤードまでダッシュし、今度は急いで制服に着替える 某有名コンビニだけあって、朝から超多忙だ 既にレジには数人の人が3列に分かれて並んでいた バックヤードにあるカーゴを片付けとりあえずレジに駆けつける 「お待たせしてすみません!」 流石にドジでノロマな自分でも、4年以上働いていたらレジ打ちは速くなる 一頻りレジをこなした後、僕はバックヤードに残した仕事をしに戻ろうとした するとレジで何やら揉めているようだった 「おい!カレー買ったのに箸が入ってたぞ!普通はスプーンつけるだろうが!何考えて仕事してんだ!?」 「すみませんっ!」 平謝りする他のバイトの子を見て僕は急いで駆けつけた 「申し訳ございませんお客様!」 「何?あんた責任者?」 「いえ、ただのバイトですが…」 「バイトが出てきてどうするの?俺はわざわざここまで会社から歩いてきたんだぞ?その交通費を払えよ!!」 こういう無茶な要求をする人はたまにいる そもそも電話してきてくれたら持って行くのに… しかしここで毅然とした態度をとっていないと、足下を見られる 僕は目を逸らさないように必死に客の顔を見ながら謝った 「申し訳ございません!!」 「謝罪なんていらないんだよ!!金払えって言ってんの!!」 「それは出来ない決まりなので…」 「じゃいいや、店長呼べ」 「ただいま店長は出払ってまして…」 「電話して呼び出せよ!!」 ヒートアップする客の声に僕は尻込みし始めた 周囲のお客さんもざわつき始めた 他のレジの子もなにも出来ずに狼狽えていた そんな時だった
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加