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「お客様、貴重な時間をとらせてしまい申し訳ございません。当店の規則としてお金を払うことは出来ないのです。代わりと言ってはなんですが、こちらの従業員優待券をお使いください。全国のお店で使えますので」
「…まあ、これで許してやるよ。次からはちゃんとスプーン入れとけよ!」
「はい、よく従業員一同気を付けます!またの来店お待ちしております」
男はそのまま機嫌良さそうに店を出て行った
「大丈夫だった?内海君」
「ありがとう…助かったよ迫田君」
彼の名は迫田 雄二君
僕と違い自信に漲った高身長なイケメン、高学歴の完璧人間
しかしとっつきにくさなど一切無く誰とでも仲良くすることが出来る
こんな僕にさえ彼は優しく接してくれる
「ああいう客は金じゃ無くても何か貰えるだけで満足することが多いからああいうのでも喜んで貰って帰るよ」
「でもあれ…迫田君が自腹で買ったやつじゃ…」
「あれくらいで場が収まるなら安いもんでしょ」
凄すぎる…僕とは人間そのものの出来が違う
僕は一生かかっても彼みたいにはなれない
何で彼のような人がコンビニでバイトなんてしてるんだろう…
以前本業をしてるのかと訊いたときはしていないと言っていたけど…
僕は彼を見ているととてつもない劣等感に押しつぶされそうになる
僕はこの世界で
少しでも割を食わないように、損をしないように生きている
必死に時代の流れにしがみついて、噛り付いている
でも彼を見ているとーー
自分はこの世界に必要無いと
そう言われているようで…
ーーー仕事を終え帰宅出来たのは午後十一時過ぎだった
一日一日が風のように早く過ぎ去って行く
このまま歳をとり、何もないまま人生を終えるんだろうか
胸中にあるそんな思いをひた隠すように買ってきたコンビニ弁当を平らげ、缶ビールを一気に飲み干した
そうして日課のようにパソコンの前に座り電源を起動する
機械音が静かな部屋に響き渡り、ゆっくりと起動してゆく
型が古いせいか、音がやたらと五月蝿い
「…新しいの欲しいな」
勿論そんな余裕はない
ピッ
「…ん?」
デスクトップ画面に移行すると一件のメールが入っていた
誰だろう。メールなんて滅多にこないのに
もしかしたらウイルスかも…
そんな懸念もあるが、僅かながら期待もある。根拠の全く無い期待だが
恐る恐るメールを開いてみる
ーーー初めまして
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ありがとうございます
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…は??
登録?
していないぞ…そんなもん
大体昨日はネットサーフィンしてすぐ寝たし…
新手の迷惑メールか?
しかし一応いんびじぶるおーくしょんで検索してみた
検索結果 1件
いんびじぶるおーくしょんのサイトのみが表示されている
そんな事も珍しいな
僕は何故か思考にすら入らずにそのサイトへアクセスした
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