怒りの代償

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 彼女が生き返ったら何をしよう。まずは謝罪だな。それで仲直りをしたら、めいいっぱい抱きしめよう。彼女は「どうしたの、そんなに甘えちゃって」なんて僕を笑うかもしれない。そしたら彼女がいなかった間どれだけ寂しかったかを伝えよう。あっ! その前に彼女はこの部屋の散らかり具合に怒るかもしれないな。そのときはしっかりと怒られよう。  魔法陣が書き上がると僕は陣を前にして座り、彼女を思い浮かべる。それから本に書いてある呪文を声に出した。  すると陣には生き返った彼女の姿が──なかった。  彼女どころかゴキブリ一匹すら現れない。  壁にかかっている傾いた時計が発する秒針の音だけが、静かな部屋の中に響いていた。 「どうして……。どうして生き返らないんだ⁈」  呪文が間違っていたのだろうか? 僕はもう一度、呪文を唱え直す。今度は間違えないように一文字ひと文字を確認しながら、しっかりと発音する。  けれども陣には何も現れなかった。  全身の力が抜けた。だんだんと思考が理性的になってくる。  たまたま古書店で見つけたこの本をなんで本物だって信じたのだろう。現実的に考えてそんなことあるわけないじゃないか。
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