6人が本棚に入れています
本棚に追加
どこかから飛んできた蝿が僕の鼻先止まった。まるで「気を落とすな」と僕を慰めてくれているみたいだった。
今まで期待という階段を上がっていた分、落下したときの衝撃は凄まじい。僕を弄んだ目の前の本に怒りが沸々と湧いてくる。顔が火照り、本を持つ手に力が入った。
「馬鹿にしやがってッ!」
本を真っ二つに破り捨てると、床に叩きつけた。それから立ちあがりバラバラになった本をガシガシと踏みつける。
「こんな、本なんか、なくなって、しまえ!」
何十回と本を踏みつけて満足すると、急速に体温が下がるのを感じた。──ああ、まただ……。
自分のことが嫌になった。こんな性格じゃなかったら、彼女とケンカすることもなかったし、死ななかったかもしれない。すべて僕の責任だ。
その場に崩れて落ちると、周囲には踏み潰した本が見るも無残な姿で散らばっていた。乱暴にちぎられたページがまるで真冬の雪のようにフローリングの床を覆い隠しており、窓から差し込む夕陽のオレンジを反射させている。
僕はその光景を見つめながら、絶望を感じていた。これで彼女を生き返らせる希望は潰えたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!