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「副委員長になりたい方はいますか?」
花音が訊ねるものの、やはり全員目を逸らす。すると一人が「名案!」と手を挙げた。その生徒の目は空いた席に向けられている。
「今日休んでるこいつを副委員長にすればいいんじゃね?」
「そ、それは……」
あまりにも勝手ではないかと花音は思った。しかし、他の生徒たちも口々に「そいつに任せようよ!」と揃えて言う。
困り果てた花音が牡鹿先生を見ると、先生は顎に手を当てて少し考えた後、花音の方を見た。
「とりあえず、仮の副委員長として今日休んでいる白銀蒼くんにお願いしてみましょう。もし白銀くんが嫌がったら、また話し合いの場を設けます」
「わかりました」
心の中で花音は顔もわからない白銀くんに謝りながら、自分の席へと戻る。窓の外に咲く花たちは、花音の心の内側など知らずに風に揺れていた。
委員会などが決まった翌日から、早速花音と副委員長による伝統の花を育てる仕事が始まる。
「俺、白銀蒼。牡鹿先生から話は聞いてる。桃瀬さんだよね。よろしく」
花音に話しかけてきた蒼は、身長がクラスで一番と言って過言ではないほど高く、スポーツ経験者なのか筋肉質な体で、おまけに刑事ドラマに出てきそうなコワモテである。
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