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声をあげそうになって、僕は自分の口をふさぐ。かわいそうじゃない。なんといっても、悪魔、なのだから。
でも、天使の表情は、貼り付けたような笑顔で、どこか冷酷さを感じてしまう。喜びに麻痺したような感覚の中、僕は少しだけ罪深い考えを抱いた。
神様が、僕と家族に不幸をもたらしたかもしれない、と。
天使たちは宙に浮いたまま僕を見下ろし、静かにいった。
「あなたの両親は、学費のために遅くまで仕事をしていたのですよ」
その声は穏やかで、優しげで、母のようなぬくもりにあふれていた。
ああ、恨むなんてどうかしている。両親はいい人たちだった。そんな思いが胸に広がると、天使、そして天界への疑いが、溶けるように消えていった。
風琴を奏でるように、美しい声はさらに続ける。
「神はあなたの美徳を認め、天使として悪魔掃討に参加することを認められました。さあ、異端の悪魔も片付いたので、平安の続く世界のため、天界へ行きましょう」
金の粉が、きらきらと夜空に舞う。それは幾億の星のようで、僕の心を酔わせた。まるで、幸せだったころに見た夜景だ。
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