パンドラの天使

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 懐かしい記憶に、両親へ思いをはせる。  父さんは、母さんは、今どうしているのだろう。きっと僕のようには、幸せじゃない気がする。  羽を開きかけた天使の背中を見て、僕は肩を落とした。一人の天使が空へ昇っていく。 「家族にあいさつしてきてもいいですか」 「いいえ。あなたのご両親は、天使を見ることができないでしょう。残念ですが、またいつか、夢の中ででも会いに行ってください」  天使を見上げた。震える手を体の横にどうにか押さえつけ、天使の言葉を疑う。そんな、家族を大切にしない天使なんて。  けれどその顔には、哀れみも同情もこもってはいない。なぜ。僕が両親に大切にされていたのなら、父さんと母さんはきっと寂しがることだろう。老婆の、最後の言葉が耳によみがえる。  ――わたしは、ただ自由が欲しかった…… 「それなら、両親のもとへ返してくれませんか」
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