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「平等を謳う天界の破滅こそが、平等な世界になる第一歩なのさ。天界には階層があって、あんた、デュナミスは何があろうとも、神に、熾天使に、従わなくてはならない。ただの善を装った自己中心的な連中じゃないか」
民家の上に、天使に照らされた老婆が見えた。腰はもう伸びて、堂々と剣を構えている。
「あんたが望んでる天界の存続は、わたしの家族を救わず、孤独な少年も助けないような、冷酷な世界をつくり上げた。抵抗勢力は悪魔と呼ばれ、もはや世界に平等はない」
嘘だ。悪魔は嘘つき。
でも、何もできない。不意に自分が無力に思われて、目を閉じる。けだるく、時間がゆっくりとすぎていくように感じても、生気に満ちた天使の声を遮ることはできなかった。
「いいえ、天界はすべての被造物を守るところです。そして、いくらかの天使を壷に封じるだけで破壊できるような、不完全なものでもありません」
天使の声に僕も加勢すべきだと意識させられる。そのために天使になったのだ。
気づけば手の中に、金の鎖が現れている。
民家の屋根へ、なれない翼を使って飛びあがった。ほんのりとした光に並ぶと、老婆の表情まで見えた。
しわだらけの老婆は顔をしかめて、人間のように泣いている。その涙は誰に拭われることもない。
「隙があれば、いつでも捕らえてください」
僕は天使にうなずいて、鎖を振り下ろす。
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