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彼はその子を抱いたまま、無意識に身体をゆりかごのように揺らしていた。
この子が七つになったあの晩も、確かこんな風に月が出ていた。
腕の中にいる子は、どんどん大きくなって、もうすぐ自分を追い越すだろう。
図体ばかり大きくなって、それでも中身はまだまだ子供のこの子は、一体どんな大人になるのだろうか。
それこそ目と鼻の先の事のはずなのに、それでも未来のことは、彼にも解らない。
明日は久しぶりに、村の若者の婚礼だ。
もちろん彼も立ち会う。
いつか、この子の門出も、見届ける日が来るのだろうか。
──神妙な顔して、ガチガチに緊張しているその姿が脳裏を過り、彼は思わず噴き出した。その時、その子は眠りながらも、なんだか不服そうに眉を潜める。その表情に、さらに彼の笑いは止まらない。
可笑しさと可愛らしさに身体を震わせながら、腕の中のその子をぎゅっと抱き締めて──
『楽しみにしてるからな、坊主』
と頬擦りをした。
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