When I was with you

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 終礼が終わったばかりの教室には、いつもと違うざわめきがあった。  クラスカーストなどまるで存在していなかったかのように、この一年間、全く話をしなかったような間柄に会話が生まれていたり、一分一秒、一瞬たりともこの時間を取りこぼさんとする必死さがありながら、その実、気持ちが時間を上滑りしているような。  三学期に入って、全員が揃うことのなかったクラスもさすがに今日の欠席は誰もなく、高校最後の授業──といってもホームルームだったが、皆で揃って終えることができた。たったそれだけのことでさえ、ひどく特別なことのように感傷的になってしまう。  担任から常々整理整頓をうるさく言われていたのに、詰め込みすぎでいつも誰かの体操服袋がはみ出ていたロッカーも、放課後も教科書やノートが入ったままの机の中も、壁の掲示物も後ろの黒板も、今はどこにも何もない。それらを殺風景だと思ってしまうくらいには、高校生活は充実したものだった。  もう勉強道具の必要のない鞄はあっけないほど軽くて、その寂しさを千夏(ちなつ)は一人笑いでごまかす。  窓の外には小雪とも呼べないくらいの白い粒が、かすかに風に紛れていた。  特進コースの一階下にある普通クラスの教室を覗くと、あきがマフラーを巻きながらクラスメイトと雑談していた。うしろのドアから「あき」と呼ぶと、振り返って笑顔を見せる。 「千夏っちゃん! どうしたのー?」 「今日、一緒に帰らない? 四人で。最後だしさ」  あきは一瞬のちに「うん!」と頷き、その快諾に合わせて、毛先まで真っ直ぐにアイロンされた黒髪が揺れる。  明日、私たちは、高校を卒業する。
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