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「若草に改名したら」
「いや、あ~でもそっか、実名は言わない方がいいのか」
「そうだよ。お互い実名は言わない方がいいと思う」
ふふん、とにやにやしている少女を見ていると、まんざらでもない自分がいることに気付きました。
「名前、若草にするわ」
SNSでの名前を「若草」に改名した私を見ていた少女は、たたっとスマホ画面を滑らせ、私と相互フォロー関係になってくれました。少女の「neon」という文字が私の眼に強く刻まれました。
一時を共に過ごした少女は、可愛くて、凛々しくて、強気で、コロコロと表情が変わる子だと知りました。また会いたい、ふわふわとした夢見心地で帰路につきました。
ですから、突然のことだったのです。私が大学生活に慣れてきた頃に、少女は青い鳥と共に消えました。少女のアカウントは凍結されていたのです。
私は少女の相互フォロー相手を全員覚えていましたので、その人たちに片っ端からメッセージを送りました。
『neonちゃんがどこにいるか知っていますか?』
『飛び降りたってきいた!』
『ほんまやWWWWWW凍結されてやんのWWWWWW』
『え、やっぱり居ないよね!? 私も会えてなくて』
『しらないです』
『他の子にも聞かれたけど、neonが死んだのはマジや』
『多分死んだけど速報には載ってない』
『それよりさ、えっくすじゃぱんになるのやばくね?』
通知がしゅぽしゅぽしゅぽしゅぽと、増えていきました。私は少女が転生したと信じています。
天使が墜落したと聞いた場所にはゴミがいるだけでした。歌舞伎町の中で少女はとても綺麗でした。私は少女と青い鳥が不在のアプリを消しました。私は青く澄んだ空を見上げ、天使の姿を瞼の裏に閉じ込めました。
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