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彼女への興味が失せた私は界隈を抜けました。地元にいると彼女を見かける確率が高いですから、親に頼んで大学の近くで一人暮らしをすることにしました。
彼女の姿は来夢のアカウントから消されていました。SNSを開くと、一枚の写真が流れてきました。女の子が全裸でコンクリートの床に横たわっていて、重めの前髪にハーフツイン、申し訳程度の乳房、大事な部分だけを守るように数十枚の諭吉を纏っていました。傍らに置かれている桃色の鞄は、量産型であることが唯一の救いでした。大丈夫、顔は覆われていましたから、彼女ではないでしょう。
それでも、彼女がくれた三十万円が存在を主張してくるのです。彼女の残り香が纏わりつく諭吉を、私は使うことも、捨てることも、返すこともできないままでいるのです。
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