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《天使の秘密》
転校生の少女遥 江里子は周囲から天使だともてはやされている。
それはもちろん久川 怜奈も彼女をもてはやしていた。
江里子は黒目が大きく小柄ではあるがほっそりとしていて色白な美少女であった。髪の毛はさらりとしていて、よくカールを巻いて遊ばせてもいる。
そんな少女に男子どもが目に付かないはずがない。江里子と仲良くなろうと必死だ。
付き合いたいと願って行動している男子生徒もいるが江里子は断っている。
空が夕暮れに差し掛かる頃、怜奈と江里子は一緒に帰っていた。江里子と怜奈は波長が合うらしくよくこうやって帰るのだ。
「ねぇ怜奈。驚かないで聞いて欲しいのだけれど……」
「ん~、なに急に?」
江里子が少し困ったような表情を見せた。その表情でさえも同性の相手を射止めてしまうような顔に羨ましいを通り越して可愛いが募る。
だが江里子はウェーブのかかった髪を揺らした。
「私、このまま帰らないといけないみたいなんだ。……天界の獣として」
「――えっ?」
獣だと聞いた。獣だなんて聞いたことがない。仮に本当でも江里子は天使だと思うからだ。
怜奈は思案した表情を見せる江里子へ伺うような視線を向ける。
「そんなの嘘……でしょ? それに、江里子は獣じゃなくて天使だよ。可愛いし、優しいし……」
「ふふっ。私は正真正銘の獣だよ。――だったら見せてあげようか?」
するといきなり江里子は川辺に向かったかと思えば――身体を発光させた。光り輝いた華奢な身体は徐々に大きくなり、翼を持った怪獣へと変貌させる。
――だが美しかった。
「き、れい……」
思わず口にした言葉に江里子は微笑んだ。それから怜奈を後ろへ乗せて飛び立つ。
怜奈は焦った。
「え、ど、どういうこと!??」
「怜奈を天界に連れて行ってあげるよ。大丈夫、死なないから」
夕暮れの空を白き獣が飛び立った。
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