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私は今日は神様のお世話係なので神様のそういう不謹慎な言葉にも反応します。
「変わりがないということは安定しているということじゃないですか。だったらそれに越したことはないですよ。人間はいちいち戦争を起こして海を汚したり山を燃やしたり生きているものをすべて狩りとるじゃないですか」
「そういうことじゃないんだよ、アマコ。もっと私はドキドキしたいしわくわくしたいんだよ。日本は死にそうだ。もっと魅力があると思っていたんだけどね」
神様は最近日本びいきだ。この間までは韓国びいきだったのに一体どうしたんだよ、面倒くさいなという言葉を言いたかったがそれも面倒なので「では何か起こしてみたらいかがですか」と言った。
「アマコ、私が何も起こせないのは知っているだろう。数千年前は人間のふりや動物のふりをして地上に降りていたけど私が人間の前に現れると話がややこしくなる」
「それはそうですよ。神様なんですから。皆無意識に神様特有の力にあてられておかしくなっちゃうんですよ。だから現れないほうがいいんです。こうして上から見ているだけで楽しいじゃないですか」
神様は人前に出ないほうがいいというのは暗黙の了解。今ではそうなっている。どうしてそうなるのか神様自身もわからないみたいだけど、生き物の前に神様が現れると皆が皆その魅力に引き寄せられて混乱や殺し合いを招く。
ひどい場合は戦争にまで発展しそうになったとか。そんなことあるのかよと思うかもしれないけど、実際に今までに危ないことは何度もあった。
そうならないためにも神様は高みの見物があっているのだ。
変なことを言わないでほしいな。特に自分が神様の世話係の日はというのは皆が思っている。
私は内心ひやひやしながら神様の髪の毛をといた。すると神様が私に向かって言ったのだ。
「アマコ、少し地上におりて人間たちを観察してきておくれよ。そして私に報告しておくれ」
「ええ!」
「いいじゃないか。そうしたら当分魂の指導の仕事を免除するから」
「いや、神様それは」
「もう決定事項だから!じゃ、これから行ってらっしゃい」
ええ~とその場から逃げたかったけど神様の命令は絶対だ。それに私が苦手な魂の指導の仕事は免除されるならそれはそれでありがたい。死神とのやりとりが苦手なのだ。
大きくため息をついて私は背中にある羽を掻いた。地上の空気はここよりもよどんでいるから羽が汚れやすいのだ。
今日羽をきれいにしたばかりなのにという文句は飲み込んだ。
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