捨て鉢酒場の片隅で

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 どうやら鷹村というらしい、肺がん野郎は俺のいわゆるノミトモだ。  よくいく飲み屋の常連同士で、しょっちゅう会うもんだから自然な流れで一緒に飲んで、そのまま店が閉店になって追い出されてまだ飲み足りないからとどっちかの家で飲み直したりする程度には、仲が良かった。  その割に俺は奴の名前も覚えていなかったが、あっちは俺の名前覚えてたんだと知って逆に驚く。  俺のこと呼ぶときはだいたい「痛風」って言ってたから。  たまに「アル中」とも呼ばれていたっけ。  ちなみに俺のことを痛風と呼ぶ奴は本名を呼ぶ奴よりは数多いと言っておく。  そんなもんだ、夜の町なんてのは。  肺がん野郎は酒よりタバコが好きだった。  このご時世、モクモクプカプカしてても怒られない場所なんてもうほとんどないから、あの店は貴重なオアシスだと宣った。  俺は喫煙者ではない(そんなもん吸う金があったら酒を飲みたい)から、ケムいだの臭いだの文句を言ってはいたが、まあ今更副流煙気にしても寿命が延びるとも思えないので、あいつが隣で吸っていてもさほど気にはしなかった。  あいつにはどんなに肩身が狭くなろうとも、吸わなきゃならん理由があった。
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