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────高校時代
「せんぱーい!」
速水 結乃、それが私の名前。
せんぱーいなんて言いながら走ってくるのは部活の後輩、御子柴くん。
Tシャツに短パン、バッシュを履いて汗を少しかいているあたり既に部活の練習を始めていたんだと思う。
「どうしたの、御子柴くん」
私は当時3年でバスケ部のマネージャーをしていた。
彼は高校1年のバスケ部員。
2つも違うからか謎によく懐かれていた。
「怪我しちゃって…、一緒に保健室来てくれません?それか、手当てして、速水先輩!」
「ええ、また~?貴重な1年スタメンなんだから、怪我したら駄目だよ。」
中学からバスケをやってきた中でも能力が高くて彼は大会のスタメンに選ばれていた。
多くの3年を蹴落としてその座を1年にして取っているので妬まれる事もたくさんあるけど、努力家で良い子だと思う。
若干生意気ではあるけど。
「ね、速水先輩。次の大会さ、勝ったら先輩はまだ引退しなくて良いんですよね?」
「あー…、そうだね。夏休み明けまでは部活に来るかな。」
その代わり負ければ夏休み前に引退が決まってしまう。
少し寂しいけどそれも仕方ない事で大学受験の勉強に集中する時間が延びるだけだ。
御子柴くんを見ると「そっか」と小さく呟いて私の方を見る。
私よりほんの少し身長が高いだけの御子柴くんと見つめ合うと、自然と目線は近くなる。
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