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二
数日後、僕はまた図書室にいた。
図書室の開放時間が終わったので、後片付けを終えた僕は、ドアの札を『閉室中』に変える。
もう夏が近くて、17時を過ぎても外は明るい。
その頃、僕は図書室を閉めた後、司書に部屋の利用許可を貰っていた。僕は鞄から教科書とノートを取り出す。
……どのくらい経ったのだろう。
僕はドアが、何度かノックされたことに気が付いた。
司書が来た?それとも誰か、忘れ物でも取りに来た?
僕は立ち上がり、ドアの窓が見える位置まで来たとき──
足が止まった。窓の向こうに見えたのが、桐原だったからだ。
僕は、なぜか立ちすくんでしまった。窓の向こうでは、にこやかな桐原の口が『あ・け・て』の形に動く。
開けない理由は──ない。開けるしかない。
僕は、鍵を開けた。
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