5人が本棚に入れています
本棚に追加
引き戸が開くなり、桐原は入口の両端に両手をかけて、部屋の中に上半身を差し入れた。
意図しているのかどうかは分からないが、これではもう、扉は閉められない。
僕に顔を突き出しながら、
「ありがと」
と、ニッコリ笑う。
「……忘れ物?」
僕は、内心の動揺を隠し、つとめて平然を装った。
「うん、そうかも」
と、よくわからない返事をして、彼は図書室の中に入ってきた。
……図書室内が明るくて、鍵をかけてなければ、他の生徒が間違って入ってきてしまう可能性がある。僕はまた鍵をかけた。
桐原はそのまままっすぐに、僕が教科書を拡げてる机に向かった。そして僕の向かいの席に座って、頬杖をつくと僕を見上げた。
「……何しに来たの?」
僕はついそう訊いてしまった。
彼はまたニッコリ笑って「邪魔しちゃった?ごめんね」と言った。
最初のコメントを投稿しよう!