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引き戸が(ひら)くなり、桐原は入口の両端に両手をかけて、部屋の中に上半身を差し入れた。 意図しているのかどうかは分からないが、これではもう、扉は閉められない。 僕に顔を突き出しながら、 「ありがと」 と、ニッコリ笑う。 「……忘れ物?」 僕は、内心の動揺を隠し、つとめて平然を装った。 「うん、そうかも」 と、よくわからない返事をして、彼は図書室の中に入ってきた。 ……図書室内が明るくて、鍵をかけてなければ、他の生徒が間違って入ってきてしまう可能性がある。僕はまた鍵をかけた。 桐原はそのまままっすぐに、僕が教科書を拡げてる机に向かった。そして僕の向かいの席に座って、頬杖(ほおづえ)をつくと僕を見上げた。 「……何しに来たの?」 僕はついそう()いてしまった。 彼はまたニッコリ笑って「邪魔しちゃった?ごめんね」と言った。
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