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少年は、金魚の泳ぐ水槽を見つめていた。
幅が45cmほどの水槽である。
「なにしてるの、洋司?」
呼ばれて振り返ると、そこに高校生の姉がいた。
「あ、お姉ちゃん」
「へーー、金魚、飼いはじめたんだ」
近寄ってきた姉が、少年の隣から水槽をのぞき込んだ。
透明なガラスの向こうには、二匹の金魚が泳いでいた。
小赤と呼ばれる、金魚すくいなどでよく見る金魚である。
水槽の底には砂利が敷かれ、半分に割れた植木鉢がトンネルを作るような形で置かれていた。
「……?」
姉が目を細めた。
その植木鉢の破片がつくる半円形の暗闇の中で、黄色い双眸が光ったように見えたのだ。
次の瞬間、姉の口から「ひっ」と短い悲鳴が漏れた。
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