金魚のいちごちゃん

1/1
前へ
/1ページ
次へ
ひらり。ひらり。 長い尾を翻し赤い鱗を煌めかせて泳ぐ金魚。 その金魚はとても小さくてまだ 赤ちゃんのように見えた。 「可愛いなぁ」 小学生の頃お祭りですくった金魚のいちごちゃん。 初めて生き物を飼うから嬉しくて お世話は頑張っていた。 だけど、生き物を飼う新鮮さが薄れてきて いちごちゃんのお世話を怠るようになっていった。 お母さんに怒られていちごちゃんの 様子を見に行ったとき、いちごちゃんは 水草の横でじっとしていた。 慌てて水換えや塩浴をしたけど いちごちゃんの体調は悪くなる一方。 翌日、いちごちゃんの鱗は逆立っていて 調べてみると『松かさ病』という病気だった。 何とか治してあげたくて、 初めて知った薬浴もしてあげた。 黄色く染まる水の中、いちごちゃんは 動かず、背鰭を折りたたんでいた。 もうダメかもしれない。 いちごちゃんは翌日、腹を上にして浮かんでいた。 指でつついても動かなかったから 死んでしまったのだと分かった。 泣きながらお母さんと一緒に庭に埋めてあげた。 「生き物は責任を持って育ててあげようね」 お母さんのその言葉を今でも覚えている。 「ねえ、お母さん。この金魚飼いたい!!」 その日、 ホームセンターに夫と娘と買い物に来ていた。 娘は水槽の中にポツンといる赤い金魚を 指差す。 いちごちゃんとよく似ている金魚だった。 「心菜、ちゃんとお世話できるの?」 当時お母さんが口にしたように言うと 娘はうん!と勢いよく頷いた。 「だから、飼ってもいいでしょ??」 「……分かった。いいよ。 でも、これだけは約束して。 この金魚ちゃんをちゃんと大事にすること」 「わーい! お母さんありがとう!!」 それから、その金魚はルビーと名づけられ、 水槽で飼われることとなった。 ひらり、ひらり。 「綺麗」 生き物の命は儚い。 病気に罹ったり、捕食されたりしたら すぐに死んでしまう。 だからこそわたしたちは 生き物を大事にするべきだ。 人間だけが生き物を守ることができるから。 「大事に育てようね」 娘に微笑むと彼女も「うん!」とにっこり笑った。 終わり
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加