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花村響子は、地味で真面目な女子生徒だった。
高校一年生、成績は中の上。学校では数人の女友達と過ごし、学校が終わればすぐ帰宅してアニメや漫画の世界に浸る。
恋愛沙汰に興味がないわけではなかったが、残念ながら縁がなかった。その分少女漫画と乙女ゲームで心をときめかせていた。
その日、11月のうっすら肌寒い日の放課後、響子は環境委員の仕事で花壇の手入れに取り掛かっていた。
本来ならもうひとりその場に居るはずだが、今日はなぜだか姿が見えない。
逃げられたな。響子はため息をつきながら、教師に渡されたダンボールを開ける。中にはまあまあ大量の球根が入っていた。
春に咲く球根を、花壇に仕込むだけの簡単な仕事。さっさと終わらせて帰ろう。
両手を広げたくらいの大きさの花壇。今は土だけのまっさらなそこに、響子は軍手をした手で淡々と、球根たちを並べていく。
その腕に、大きな影が被さった。
見上げると金髪の男子生徒がひとり。花壇を挟んで向かい側に立っている。
響子の心臓が飛び上がった。なぜならその人は学校一の有名人だったから。
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