うぬぼれた恋心には鉄槌を

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「これ、なんの球根?」  そう言ってしゃがんで球根を手に取り、まじまじと見つめるその人は、橘大和(たちばなやまと)、二年生。  いわゆる一匹狼ヤンキーで、三年生を病院送りにし停学処分を食らったなんて伝説まである、ちょっとおっかない人……なんだけれども。    それでも、この高校の女子生徒なら誰もが一度は憧れたことがあるだろう。  とんでもなく美形の人だった。    大和先輩を、こんなに間近で見たのは初めてだった。  ほんとに、この人、なんて綺麗なお顔なんだろう。芸能人レベル、いやそこらの芸能人より全然かっこよくない?  背も高いし、声もセクシーで……  やだ私、今顔テカってないかな?……    響子は目の前の美しい顔に見惚れながらも、咄嗟にそんなことを考えていた。 「……で、なんの球根?」 「……あ!あ、はい、それ水仙です」 「おー。これが水仙か」  なぜか嬉しそうな顔をする大和先輩。響子はうるさく騒ぎ出す心臓に手を当てながら、なんとか声を絞り出す。 「す、水仙、お好きなんですか?」 「んー、特別好きってわけじゃねーけど。前に水仙の話聞いたことあってさ。知ってる? ギリシャ神話のナルキッソスの話」 「あ……たしか、すっごいイケメンのナルキッソスが、水面に写った自分に恋をして、それで水辺から離れられなくなって、衰弱して死んでしまうっていう……」
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