うぬぼれた恋心には鉄槌を

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 大和の言葉を聞いた時、響子は自分が今どんな顔をしているのか、とっても変な顔をしているんじゃないかと心配になった。  そして、平然を装った。 「彼女さん……ですか?」 「まだ。口説いてるところ」 「口説いてるところ」  口説いてるところ。  響子の口が、勝手にエコーしていた。    そうか。  大和先輩には好きな人がいるのか。    何かを察したのか、普通そうな男が目を細めて大和を睨みだす。  どんな人なんだろう。  いいなぁ。大和先輩に口説かれるなんて。  その人は幸せだなぁ。  絶対付き合っちゃうじゃん。だってこの人に口説かれて落ちない人なんている?  頭の中だけは高速で動いていた響子の手首を、突然誰かがギュッと掴んだ。   「すみません、こいつ先生に呼ばれてるんで、連れてきます」  間宮だった。間宮は響子の手首を掴んで無遠慮に引っ張り、ズンズンどこかへ歩き出す。 「え、ちょっと間宮」 「おー、じゃあな」  大和の呑気な声が後ろに聞こえた。
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