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「真瀬さん、新人採用したから教育よろしく」
「またですか」
私は大袈裟にため息を吐いた。
店長から新人教育を任されたのは九月のことだった。
本屋の最大の繁忙期は冬休み、二番目が夏休み、次いでゴールデンウィークだ。つまり世間が休みの時が忙しい。閑散期に新人を採用教育し、次の繁忙期に備えるのだ。
『まちの書店』はその名の通り、小さな町の本屋だ。社員も私と店長の二人しかいない。必然的に教育も二人で手分けして行うことになる。
「仕方ないじゃん。漫画家志望の遠藤くんがバックれちゃったからさぁ」
「面白そうだからで採用するからですよ。見るからに接客向いてなさそうだったじゃないですか、彼」
「人間どこかで挑戦しなきゃでしょ。じゃ、俺明日休みだからよろしく」
店長は手を振りながら売り場へと向かって行った。あの適当な態度、腹立つ! とは言え冬の繁忙期に向けて必要なので仕方がない。
まぁでも、できれば次は長く働いてくれる、やりやすい人であってほしいな。
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