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だが、ここでも押し寄せる好奇心に負け、結局、僕は自宅から歩いて十五分ほどのその神社に向かった。
まだ暗くもないのに、人気がまったくない神社に到着すると、境内にピンクのワンピースを着た若い女が立っていた。
黒いアタッシェケースを提げた女は、恭しくロングヘアーの頭を下げた。
「こんにちは。待っていました」
声からして、どうやら彼女が電話の相手らしい。
女は僕に言った。
「では例の紙を見せてください」
あの本にはさんであった紙のことだろうか。
ポケットから取り出した厚紙を女に手渡す。
女は厚紙を確かめるように眺め、小さくうなずいて言った。
「了解しました。では、さっそく取引を始めましょう」
そう言って女はアタッシェケースを開けてみせた。
その中身を見て僕はぎょっとした。
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