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この二人は図書館の本を介して、お互いの連絡先のやり取りをしていたのだ。
正体は一切わからないが、とにかく関わってはいけない人たちに違いない。
まずい……。早く逃げないと。
今や、僕の体は汗だくだった。
男は僕に吐き捨てるように言う。
「お前は何者なんだ? まさか刑事じゃないだろうな」
男と女の二つの鋭い視線を浴びて、僕はヘビに睨まれた蛙のように動けなくなっていた。
男は持っていたボストンバッグを地面に置いて、ファスナーを開けた。
中身は大量の札束。二千万円はあるだろう。
男はポケットから黒っぽいものを出した。
拳銃だ……。
僕はその場に尻もちをつく。足がガタガタと震え、今にも貧血を起こしそうだ。
男は拳銃を扱いなれているように見える。
ああ……僕の運命はどこから狂ってしまったのだろう。
あの一冊の自己啓発書のせいで、とんでもないことになってしまった。
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