『ゲームの裏技大全集』橋本聡太

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『ゲームの裏技大全集』橋本聡太

『題:ゲームの裏技大全集  僕にとっての運命の一冊は、ゲームの裏技大全集だ。この本には、四十年程前から二十年前までのゲームの裏技が記載されている。何故なら発刊されたのが二十年前だからだ。しかし、今の時代に読んでも全く色あせていない。むしろロマンが溢れているように僕は思う。 どうしてそう捉えるのか。それを説明するために、まずはゲームの裏技について少し書かせていただく。 そもそも裏技は、大まかに分けると二つある。意図的に仕組んだものと、意図せず発生したもの。前者は、わざと発見しづらい仕様にして大半のプレイヤーがスルーしてしまうように設定していたり、有り得ない組み合わせ(プールのステージで、アイテムの一つである除草剤を流し込む)により思い掛けない効果や演出を発生させるなど、制作側の遊び心が感じられることが多い。隠しアイテムを手に入れていると重要なシーンで特殊演出が追加されたりもする。また、一度クリアした後、二週目に入ると一週目では無かったイベンなどが発生するよう仕組まれている場合もあり、何度も遊べる工夫がされていると製作陣のソフトに対する愛情が感じられて嬉しくなる。 そして後者の、偶々起きたバグに依る裏技について。原因としては、入力したコマンドが想定外の影響を及ぼし隠しデータが表出する、設定した進数の数値が別の挙動に繋がり誤動作や処理を引き起こす、ステータスにマイナスを掛けたらオーバーフローを起こしてプラスの最上値の挙動を始める、などが挙げられる。これにより、ゲーム内の人物やステータス設定、敵キャラなどが僕達人間の想像が及ばないような動きを始めたり(百パーセント死ぬとわかっている行動を取る、優しい人柄という設定のキャラクターが無限に包丁を投げ付けて永遠に追い掛けて来る、壁に向かってずっと頭突きを続ける、「この街を守りたい」と言っていたキャラがその街の家々にキャノン砲を打ち込み続けるようになる、など)、存在しないはずのキャラが現れたり(没データや隠しデータの表出)する現象が起きるようになる。こういった奇妙な挙動は人間がなかなか思い付かない物が多く、機械的に数字を処理するプログラミングだからこその動きである。そのような現象に、僕はロマンを感じた。だから、大学へ進学する際にはプログラミングを専攻するつもりだ。来年、二年生に進級する際には理系を選ぶと既に決めている。このように、僕にプログラミングへの興味を抱かせ、進路選択にまで影響を与えてくれたのは、ゲーム自体と、この裏技大全集のおかげだ。だから僕にとっての運命の一冊は裏技大全集である。将来、プログラミング関係の仕事に就けたら「意図的に、有り得ない挙動を取るバグ」を上手く仕込んでみたい。一方、「バグや裏手を付いた挙動」という隙のないゲームを作りたくなっているかも知れない。うむ、やっぱりプログラミングにはロマンが溢れていると思う。』
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