692人が本棚に入れています
本棚に追加
珈琲を頼むためには、特に必要もなかっただろうメニューをわざわざ手に取ったのは、はたくためだったのか、と頭を押さえて、秀行の顔を見た。
「もういっぺん言ってみろ」
おかしなことを言えば、はたくっ、という構えなのか。
まだメニューを手にしたまま、秀行は自宅でそうであるように、高圧的に言ってくる。
「三年経ちました。
約束通り、離婚してください」
「お前は、鶴か、乙姫か」
約束ってなんだ? と言われる。
「今度言ったら、水かけるぞ」
「ええーっ。
三年経ったら、離婚してもいいって結婚するとき言ってくれたじゃないですかーっ」
「記憶にないな。
大体、お前の実家に幾ら投資したと思ってるんだ。
離婚したかったら、全額返せ」
「えーっ。
なんですか、それっ。
まるで、結婚詐欺じゃないですかっ」
と言うと、秀行は顔をしかめる。
最初のコメントを投稿しよう!