私、今から詐欺師になりますっ

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「誰か好きな男でも出来たのか?」  腕を組み、窺うようにこちらを見て、秀行は訊いてくる。 「は?  いいえ、全然」 「だよな」 と秀行は言った。 「だよなってなんですか~?」 と思わず、テーブルに腕をつき、身を乗り出す。 「いや、全然色気がないから。  ……人妻なのにな」 と多少呆れたように言ってきた。 「だからーっ、そういうことじゃないんですよー。  ほら、好きでもないのに、結婚してるとか、不純じゃないですかっ。  愛もないのに、結婚してるなんて、売春と一緒ですよー」  そう主張する茅野を秀行は冷ややかに見て言う。 「それ、わかってて結婚したんだろう」  うっ。  それはそうなんだが……。  あのときの自分に、他に選べる道などなかった気がするのだが。  お願いします、茅野さん。  会社を救ってくださいとみんなに頭を下げられて。
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