765人が本棚に入れています
本棚に追加
「誰か好きな男でも出来たのか?」
腕を組み、窺うようにこちらを見て、秀行は訊いてくる。
「は?
いいえ、全然」
「だよな」
と秀行は言った。
「だよなってなんですか~?」
と思わず、テーブルに腕をつき、身を乗り出す。
「いや、全然色気がないから。
……人妻なのにな」
と多少呆れたように言ってきた。
「だからーっ、そういうことじゃないんですよー。
ほら、好きでもないのに、結婚してるとか、不純じゃないですかっ。
愛もないのに、結婚してるなんて、売春と一緒ですよー」
そう主張する茅野を秀行は冷ややかに見て言う。
「それ、わかってて結婚したんだろう」
うっ。
それはそうなんだが……。
あのときの自分に、他に選べる道などなかった気がするのだが。
お願いします、茅野さん。
会社を救ってくださいとみんなに頭を下げられて。
最初のコメントを投稿しよう!