0人が本棚に入れています
本棚に追加
こういう公募が行われていたりするんだがな、と大次郎はある日、その雑誌を同居人の小太郎に見せたのだが、彼は一見、一笑する風情。
「一冊の本だって? しかもなナニかい、ウンメイの――だって?」
小太郎は、ヌケヌケと大次郎に反駁した。
ウンメイ、だなんてオーゲサな、と小バカにするような態度が、大次郎は気に入らなくって、グイと頭を小突いてやったが、暴力はイケませんヨと泣きそうな顔で言われたので、ちからが弛んだ。
小太郎は一見、気が強いようだが、ホントのところ、そうでもない。
かれこれと短くもない付き合いだが、口喧嘩をしていても、そのうち泣きそうな顔になるのがご愛嬌と言えばご愛嬌だ。
それでも、ギャフンとは言わせたい。
「書いてやろうじゃないかよ」
大次郎はそこで、見得を切るみたいに言った。
「は?」
「書いてやるよ」
「だから、何を?」
泣き虫な子犬のような顔をして、訊ねる小太郎はちょっとキュートだ。
大次郎は、うんうんと頷いて、そうだよ、書いてやるよと繰り返し、
「だから、ウンメイの一冊と言えるような本をな、このオレ様が書いてやるって言ってんの。まあ、きみにとってのな」
はー、とふざけてひれ伏すような小太郎の様子が、またカワイイ。
そんな風だから、おまえのことが、オレは好きなんだ、と悪びれもせず、言って返す。
ヨシヨシと頭をナデナデなんてことまでしてやって、大次郎は笑った。
さて、約束したからには、ウンメイの一冊の本とやらを、自分は書かなくてはならないのだよん、と大次郎は不安になる。
ある程度のものが書ける、そんな自信めいたものはあるにはあるのだが、
〝ウンメイの〟となると、また話は別だ。
数年前、ある文芸雑誌の新人文学賞の最終候補まで、残ったことがある。
だが、以来、執筆の方は不調で、スランプ気味。最近は、本を読むことさえ、億劫なところがある。
これではイケナイ、といつも思っている。
何とか現状打破を図りたい、その思いは募っていた。
これもいい機会というか、チャンスかもしれない。
書いてみようじゃないか、大次郎のココロは急な回転を始めるようだ。
書き出しは、こんな感じかな。
――一冊の本だって? しかもなナニかい、ウンメイの、だって?――
1行目は、そっくりそのまま、小太郎が反駁しながら、放った言葉を使った。
ここから一篇のお話が始まる。そっと扉を開ければ、新しい物語が待っている。
書ける、書ける、と大次郎は我が身を励まし、〝自分達のことを書こう〟と決めた。
自分達と言っても、もちろん、そっくりそのままの自分達ではない。よく似ているような、そうでもないような、でもやっぱり似ているような、そんな風なものを書きたい。
登場人物は、だから、自分達の名前をもじって、小次郎と大太郎とした。
夜の酒場で偶然出会った二人が、瞬く間に恋に落ちる。
――奢らせてくださいと水割を勧める大太郎、これはこれはとグラスを合わせる小次郎。
〈ウンメイだね〉
〈そうだね〉
カチンとグラスの凛とした音が響いて、さあ、物語の始まり始まり、一杯二杯と水割りを飲み干し、でも五杯まではいかないうち、そろそろ出ましょうかと切り出したのは、大太郎で、はいそうしましょうと小次郎は頷いた。
外に出て、大太郎はタクシーを止める。二人で乗り込む。
行先は、もちろん、大太郎のアパートだ。
こうして、オレたちは、ボクたちは、いっしょに暮らし始めることになるんだ。どちらも決めていた――
「何だ、何だよ、笑わせるんじゃないよ」
そこまで読んだ小太郎は、ホントに苦笑いをした。
夜の酒場でなど、自分達は出会ってはいない。
いや、出会いの時、夜の酒場の前の道の側溝で、小太郎はゲロを吐いていた。
大丈夫ですか、と大次郎は声を掛け、背中をさすってやり……そんなことはしていない。
ケッ、キッタネー。飲み過ぎはバカ、限度ってものを知らずに酒など飲むな、と毒づいて、行き過ぎようとしたが、待ってくださいと切れ切れの声で縋られた。
「怖いんです、酔っぱらっているのはまだいいとして、このまま、この側溝というものに、ふらふらと頭から落っこちちゃいそうで。打ちどころがわるければ、ボクは死んでしまうってものではないでしょうか」
大次郎は無慈悲に嗤った。
「落ちゃしねーよ。だいいち、あんたのアタマ、ソモソモでかすぎるよ。ここの側溝になんてハマりゃしないよ」
「冷たいんですね」
「あー、冷たいよ。何しろ、今のオレっていうのは、付き合っていたヤツに、振られたばかりだしな。他人に親切にしてやるヒマがあるなら、他にすることがあるだろうってもんだ」
「ほー、そうですか。そりゃ、よかった」
「よかった?」
「お仲間がいてくれたってわけで。こっちは二連発の悲劇に遭遇ですよ。仕事の面接にはハネられるし、付き合っていた子からも三行半……」
ふーん、そうかい、とヒト行き着く調子で、面接にハネられたというからには、現在無職であるのだろうし、恋人らしき人物からもフラれたというからには、よーするに、幾晩もフテ寝をしたって追い付かないくらい、コイツは打ちひしがれているのだろうと大次郎はリカイした。
だが、それが何だ。同情ばかりしていられない。
「じゃあ、達者でな」。大次郎は小太郎を、そのまま見捨てて、行き過ぎかけた……。
「そーだよ、あんたは、ボクを見捨てて、そのまま行き過ぎようとした。だけど、そうしなかった。三歩は進んだところで引き返し、オレの部屋に来いよ、と言った。うんとボクは頷いた――そして、ボクたち二人の生活が始まった」
「そんなぐあいに言われると、このオレってのは、なんだか結局、けっこうイイ人みたいに聞こえるな」
小太郎が笑う。大次郎も笑う。
……
〈ウンメイだね〉
〈そうだね〉
そうして始まった二人の物語。
塾の講師という仕事を持っている大太郎には、まずまずと安定した収入がある。
「まあ、のんびりと将来のことを考えるってのも、わるくないものだろうよ」
大太郎は、そんな言い方をして、小次郎を安心させてくれたが、小次郎とて、そんなぐあいのやさしさを見せられると、却って甘えてばかりいられないという気持になった。
アルバイトぐらい、やんなくちゃなとネットで検索し、引越し業者に雇われたが、力仕事には自分は向かないと三日も経たないうち悟った。
〈ボクって、ダメなヤツだよ」
泣きそうになる小次郎のその顔の頬にひとすじの涙が伝って流れるその一瞬前にも、大太郎は、その片頬に軽くキスをしてやり、慰めた。
〈きみはダメなヒトじゃない、たまたまチャンスに恵まれていないだけさ。今がガマンのしどころってものだな〉
「キャー、なんて、イイ人、大太郎さん、いや、大次郎さん?」
そこまで読んで、小太郎は、パソコンのワープロ画面に投げキッスでもしそうな勢い。
「おだてるな」
「今がガマンのしどころ、かぁ。イイこと言ってくれるじゃん」
「まあね」
「まあ、これからもヨロシク。てか、物語の続きを早くね」
煽られ、大次郎はワープロ画面に向かう。
カイあってか、我ながら驚くほど、物語は進んだ。
キーを打つのも追い付かないほど、1行1行が次々とあふれ出て来る。
オレは復活して来ている。見る見るそうなっている――大次郎は我に言い聞かせたい思いだ。
「さすがだね、かつての新人文学賞候補作家であるだけのことはアル」
横から、ワープロ画面を覗き込みながら、小太郎も微妙な褒め方をする。
「だから、続きを早くね。読みたいよ」
……きみはダメなヒトじゃない、たまたまチャンスに恵まれていないだけさ。小次郎を励ましてやまない大太郎には、しかし、小次郎にも打ち明けていないヒミツがあった。
それを思うと、ゴメンよと小次郎に謝りたくなるが――実は、大太郎には、小次郎の他に、もう一人、〝想い人〟があった。
昔の文学仲間だった。同人雑誌で競作しての切磋琢磨、かれこれ、5年ほどの付き合いがあった。いっしょに暮らした時期もあったが、3年ほど前、関係がぎくしゃくし始め、いったん別れた。だが、半年後には仲は復活した。しかし、またあれやこれやがあって、再びの同棲解消。そんな時、小次郎との酒場での出会いがあったというわけだ。
自分がイケなかったのだと今でも、大太郎は反省している。
家事の分担も守らなかったし、生活費も相手に負担をかけていた(その頃、大太郎は競馬に凝っていて、塾講師としての自分の稼ぎの大半を賭け金に費やしていた)。
チャンスがあれば、謝りたい。
《きみとは、やっぱり、やっていけない》。一筆の置手紙を残して、住まいを去ったアイツは、今頃どうしているのか。
今の自分は、競馬からも足を洗い、創作の方はパッとせずとも(シカシ、《ウンメイの一冊》なる物語を書くと決め、いや、じっさいこうして書いている!)、塾講師としての仕事は、まずますとも順調にこなしている。
きみとはやっていけない。見限ったアイツに、今の自分を見せたい。
「えー、そんなヒトが、やっぱり、大ちゃんにはいたのかよー」
小太郎は驚くばかりだった。
「いやさ、出会いの時、フラれたばかりだと大ちゃんは言っていたけど、そのヒトとは完全に切れていて……なんて、信じていたボクは、お人よし?」
「違うよ。だからー、この物語には、オレたちに似た人物が出て来るけれども、100パーオレたちそのものではない」
「だけど、〝想い人〟なんて書いてるじゃん。コレって、今でも、そのヒトのことが好きだってことだろ」
「だからー、これは物語の中のことだろ。そう、ソコントコ、わかってもらわなくっちゃな」
それでも、小太郎は納得できたという顔をしていない。
「なんだかさ、先を読みたい気分でなくなってきてるかも」
しょんぼりした声を洩らす。
「そういうわけにはいかない。オレは、この物語を中絶させない。何しろ、かつての新人文学賞候補作家のフッカツが掛かってるんだ」
大次郎は決然と言い放った。
……自分を見限ったアイツに、今の自分を見せたい。大太郎のその思いは日に日に募った。
スマートフォンをピピッといじれば、すぐにでも、連絡を付けることは出来そうな。
だが、携帯機器へと伸ばし掛ける指先は、寸でのところで止まる。ためらいが来る。
〈何を、モジモジしてんだよ〉
突然背後からの手が伸びて、スマホを奪い取られた。
小次郎ったら、い、いつの間にオレの後ろにいたのかよ。ついさっき、買い物があるって出て行った、その隙を狙っての、スマホをピピッ、だったのに。
〈ボクは、なんてったって、花の無職のご身分なんだからね。後ろからでも、突然に、誰かさんのスマホを取っちゃうなんてことも、平気のヘイザで出来ちゃうってもんさ〉
啖呵を切るように言ったあと、代行だーと声をあげ、そのままスマホを手にして、〈もしもし、もしもし〉……。
呆気に取られるばかりの大太郎だが、〈あれ、留守録になってる〉とすぐさまアキラメ気分の顔で、コンチハーとだけ言って、小太郎は電話を切る。
〈それにしてもさ、昔のカレシさんに今頃電話なんてして、どうしようっていうのさ〉
もっともな問いだが、まともにこたえる言葉を、大太郎は持ち得なかった。
あー、かったるい。あくびをしがてら、小次郎は、ちょっと出掛けて来るよと言った。
〈気分転換。コンビニで何か美味しいものでも買って来よう〉
ああ、そうして、そうして。大太郎は、ホッとしながら、見送る。
〈あ、ビールも忘れないでね。切れてるからね。キンキンに冷えてるヤツな〉――声を掛けた時、小次郎はもう玄関ドアの向こうにいた。
「ッたく、イマイチ決断力に欠けるっていうの? この大太郎さんってのは。じれったいなぁ」
小太郎はワープロ画面から視線を逸らして、タメ息を洩らしたあと、ちょっとコンビニまで買い物に行ってくるねと笑った。
読んだばかりの物語を、再現しようとしているのか。
大次郎は微笑しながら、いたずら半分の顔で見送る。
あ、ビールも忘れないでね。切れてるからね。キンキンに冷えてるヤツな――ワープロ画面に打ったばかりの言葉をそのまま小太郎に掛けて見送り、またワープロ画面に向かう。
……昔のカレシさんになど、執着も執心もしていないンだ、と大太郎は自分に何度も言い聞かせる。いないから、こうして、一冊の本を、物語を自分はクールにも書いていられるのじゃないか。
と、執筆を続けるばかりの大太郎であったが、まさしく、その時、スマートフォンからコール音が鳴る。
〈あ、久しぶり、元気かい?〉
あれ、あれ、その声は――〈忘れたなんて言わせないぞ。オレは、あんたの昔のカレシさん〉
驚かせるなよ、と返す大太郎の声は震えていた。
見越したように、相手は、そう、昔のカレシさんは少し笑って、言葉を繋ぐ。
〈何だかさー、電話なんて貰ってたみたいだから、掛けてみた。それにしても、どういう風の吹き回し? 今頃、電話なんてさぁ〉
その電話ってのは、今のカレシ殿が代行だーと気まぐれ風情に掛けたもので――なんて言い訳も出来ないまま言葉に詰まる大太郎であったが、すぐさま気持を立てなおし、
〈うん、ちょっとな。久しぶり、声なんて聞いてみたいかな、なんてね〉
ふーんと一拍の間をおいて、昔のカレシさんは、うれしいよと返した。
〈こっちもさ、おんなじこと、今、思ってたみたいな気がする〉
〈マジで?〉
〈ああ、ウソじゃない。マジ、マジ。以心伝心っていうの?〉
ふーんと今度は大太郎の方が一拍の間をおく。
その隙を外さずの勢いで、昔のカレシさんは言う。
〈焼けぼっくい、なんて、狙ってる?〉
茶化し半分の言い方に、ご愛嬌がある。間違っても焼けぼっくいなど狙っていない、承知した言い方だ。
アハハと笑って、大太郎は、今の自分について、それから、話した。
同居人の現在のカレシちゃんに読ませるために、自分は一冊の本を書こうとしている、いや、もう書き始めた、書いている。
タイトルは、ギョギョッと《ウンメイの一冊》。
〈でもな、ちょっとうまく進行していないかなって。早々、書きあぐねているって感じにもなってね。それで、昔のカレシさんなんて、登場させてみようかなって思いついて、電話なんてかけてみようかなって、ね〉
〈オレはダシみたいなもんかい〉――陽気に一笑してみせる昔のカレシさんは、お手伝いできるかもしれないぜと、しかし、言った。
〈お手伝い?〉
〈ああ、何だかさぁ、この頃退屈だから……商売の方はまあまあうまく行ってるし(元カレシさんの仕事は酒類専門のディスカウントストアの二代目さん)、あんたとお別れしたあと、御縁のあった今のカレシ殿との仲も順調だ。でも、にんげんってのは、イイ気なもんだな。けっこうシアワセって感じの日々が安穏にも続くと、ほらほら、そこにジワジワと忍び寄るは、退屈の影ってね。打破したい、と思ってる〉
打破だか何だか知らないが、ともあれ、お手伝いとやらをしてもらって、ウンメイの一冊を書き進められるのならば、有り難い。お願いしたいな、と大太郎は乗った。
〈で、どんなぐあいのお手伝い?〉
〈そんなのカンタンなことさ〉
〈カンタン?〉
〈ああ、カンタンカンタン。あんたが、こっちの世界に来ればいいってだけのオハナシ〉
〈こっちの世界って〉
〈だから、こっちの世界、ワールド。オレが今いる、こっちの空間ってやつだな〉
〈あん?〉
〈本日のお買い得品は3割引きのこのノンアルコールのビールでゴザイマース、なんてね、ディスカウントストアの二代目ばかりやってるオレじゃない。つまり、このオレは、なんつーか、いや、昔の文学的野心とやらを今でも捨ててはいない。そうだよ、オレだってね、書いてるんだ、書き始めてるんだ、あんたといっしょ、《ウンメイの一冊》なる本をね〉
〈はん?〉
なんだか、わけが分からない。ハテナマークがひっきりなし点滅を繰り返し、おかげで、脳内が見る見る熱くなり、ああ、もう眩暈だってしてきそうだ、と大太郎は不安になった。
見越した風情で、昔のカレシさんは、追い打ちをかける。
〈眩暈のせいで、ぶっ倒れてしまう前に、そうだよ、あんたはこっちに来るんだ。オレってやつは、伊達に昔のカレシであるのじゃない。わるいようにはしないさ。つか、いっしょに書こうぜ。競作? いや、共作?!〉
ワープロ画面が、その瞬間、光った。光って、消えた。
画面の中から、ぐいと突き出された手で、大太郎は頭を掴まれ、そのまま引き込まれる。
ど、どうなってるんだ。喘ぐヒマも無い。手も足も胴体も丸ごとの凄まじさ、息つく間もなく、大太郎は消えた。
徒歩五分で到着のコンビニ。通い慣れた店。ようこそと迎える入り口ドアそばの天使の置物の頭の輪ッコに軽く手先を触れさせて、小太郎は挨拶するみたいな気分。
日替わり弁当を二つに、肉まんも2ケ。缶コーヒーにポテトチップス、冷えた缶ビールは4つ、買った。買い物袋を、ぶらぶらさせて帰る。
部屋に戻ると、大次郎の姿がない。
パソコンのワープロ画面は、しかし、光を湛えている。
何処にも文字は見えない。消してしまったのだろうか。
おーいと小太郎は呼んでみる。
おーい。もう一度呼ぶと、画面が微かに翳りを帯びて見えた。
おーい。更に呼ぶと、ようやく微かな声が聞こえた。
「え、なに?」。返事をすると、
こっちのおいで、と二重奏のような声。
「大ちゃん?」
訊くと、ハーイとお道化た声もするが、それは初めて聞く誰かの声音のようにも聞こえる。
いったい全体、どうなってるのさ。
不安がヒト息にも募った。
このままじゃ呼吸困難じゃない? もともとボクは、決して気の強いにんげんでもないんだ。小太郎は、身震いした。
すると、〈そーんなコトは、どうでもいいんだ〉とまた二重奏みたいな声がした。
〈こっちにおいで、こっちにおいで。やって来たなら、ご褒美も待っているよ〉
「ゴ、ご褒美?」
〈ああ、そうだ、そうともさ。きみ待望の《ウンメイの一冊》の完成は間近だ。最後の詰めに差し掛かっている。きみがこっちに来れば、一気にゴールだ〉
「そ、そんなのって、怖いよ」
怖くない、怖くない。二重奏みたいな声は途絶えない。
あっと叫ぶヒマも無く、小太郎は、四本の手に頭を掴まれ、引き込まれる。
画面には、もう、ひとすじの光も湛えられていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!