神の薄い本、略して神本

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「なるほど……」  天嶌がうなずく。 「で、それは、ご自分で書かれるのですかな?」 「いや。誰かに、頼もうと思っている」  おれには残念なことに、絵心も文才もない。  不甲斐なさそうにうなだれ、ヘレラはそのまま、深くお辞儀をする。 「そこで、その、……これも、何かの縁だ。貴女方に、執筆をお願いしてもよろしいだろうか」 「え、……ええっ!?」  三上が驚いて、身体をのけぞらせる。 「みずから二次創作を頼まれるなんて、……前代未聞ですよ!?」 「頼む」  懇願するヘレラの白いほほが、ほんのりと紅潮している。 「なんとしても、彼奴を手に入れたいんだ。このままだったら、確実に進展なんてしないだろう。このペンだけが、頼みの綱なんだ」 「……わかりました。引き受けましょう」 「レオナさん……!」 「ミケコ。止めてくれるな」  天嶌が、不安げな三上を説得しにかかる。 「私たちの、サークル参加への門出……。それに対する、最高の好機が、ここにあるんだぜ」  試そう。私たちの画力が、『神』を、描き切れるのか。  細まった目が、闘気にゆらめいている。 「それに、だ……ミケコ。おまえ、こういうカプ正直言って、ドチャクソ好みだろ? 長年オタとして付き合ってきたんだから、丸わかりだぞ」  ミケコの顔が真っ赤になる。 「……そう、ですね。こんなジャストミート球、打たずして死ねるもんですか」  ミケコの瞳にも、同じ光が宿る。 「ぜひ、やらせてください」 「ありがとう、レオナにミケコ」  ヘレラが、満面の笑みを浮かべた。 「どういう話が良いとか、ご希望ありますか?」 「そうだなあ……おれとガウラが、ラブラブで、イチャコラしてる話がいいな」 「直球ですな」 「アバウトですね」  バッサリと切り捨てられ、涙目になるヘレラ。 「と言われてもな……じつはあんまり、思いつかねえんだ。考えただけで、……ああ」  みずみずしい艶のある緑の髪を振り乱し、いやいやをするように頭を振る。 「かわいいっすね」 「純情攻めですかな」  いつのまにか取り出していたメモ帳を開いて、レオナがさらさらとメモをする。 「ガウラさんは、どんな方ですか? 恋愛のスタンスとか、わかります?」 「結構サバサバしてるな。日ごろは、モテてえ! って言ってるけど、あんまり興味があるわけでもなさそうだ。言動の割にひとりのことが多いし、おれ以外の奴と基本、話さない」 「人見知りなのかな?」 「絆され系っぽいですね」  ミケコが、いいですねえ、と、うっとりとして言う。
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