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私が中学生になったばかりの頃。友達もできずに隅っこで絵ばかり書いていた。
「何やってるの?」
初めて話しかけられた。
話しかけたのは隣の席の新井愛子。みんなに明るく振舞って、太陽のような子。わたしがいちばん苦手なタイプであった。
「お絵描きをしているの。」
「上手いね!ねえ!私のこともかける?」
迷った。こんな綺麗な子を上手くかけるのだろうか。
「分かった!」
約3時間。長い間、モデルとして愛子はずっと動かないでいてくれた。
「かけたよ!」
決して上手いとは言えない絵だったはずなのに
「え!?うま!すげえ!将来の夢は画家さん?」
うれしかった。絵ばかり書いて陰口を言われたことだってあったし両親も上手いとは言ってくれなかったから。
涙が出てきた。
「ちょっ!泣くなって〜!」
「うぅ……」
「聞き忘れてたけどさ、あんたの名前は?」
「秋原春夏だよ!」
「秋なのか春なのか夏なのかなんなんだよw」
あまり自分の名前を気にしたことがなかったから初めて気づいた。2人で笑っていた。
「同じ帰り道なんだね!」
「ね!寄り道していい?」
「うん!」
いつも通る道を少し抜けたところには緩やかな丘があり、登ってみると
「綺麗だろ?」
真っ赤な夕日が海に反射しているのが見えた。
「綺麗!」
「なぁ春夏」
「なあに?」
「友達になってくれないか?」
うれしかった。初めての友達。だけど私なんかが友達でいいのかとも思った。
「嫌ならごめん……」
「全然!嫌じゃない!むしろ嬉しいけど、私なんかがいいのかなって……」
「むしろ春夏だからいいんだ」
「じゃあ、よろしく!」
「おう!よろしく」
これが、私と愛子の出会い。ずっとこのきれいな夕日を2人でみれる。と思っていた。
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