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1章 日記
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スマホにメッセージが届いた。
消す事ができずにアドレスに残していた番号だ。
小学2年生の息子がまだ帰宅していないとハウスキーパーの佐々山さんから連絡があった。
息子は毎週火曜日と金曜日は学習塾、月曜日は水泳教室に通っていて水曜日の今日は習い事のない日だ。
俺の子供の頃は習い事などしていなかったから、小学2年で水泳はまだしも、学習塾が必要なのかと妻に話したことがあるが、妻も子供のころから複数の習い事をしていたらしく、これが普通だと言われれば、“普通”な子供時代を過ごしてこなかった俺には反論の余地はない。
息子と言っても一緒に暮らし始めた2年前にはすでに6歳になっており、いきなり父親となったこと、俺には生物学上の父親はいるが生まれた時から父親という存在がいなかったこともあり、父として息子とどう接していいか、何をしたらいいのかわからないというのが本当のところだった。
ただ、自分の様な思いをさせたくないから、それなりの社員を抱える会社のトップであり、日々が仕事に忙殺されていたとしても極力、息子と関わるように行事などには参加している。
妻も専務という立場でこの会社を継いで日も浅い俺をさせえてくれてくれている為、塾などの送り迎えは佐々山さんにお願いしている。
しかし、今日の様な塾や習い事の無い日は一人で帰宅させるようにしていた。
小学生2年ともなれば帰りにどこかへ寄って遊ぶことはあるだろうし、友人の家に行く時は必ず妻か佐々山さんに連絡するように子供用の携帯を持たせていた。
それなのに今日は17時になっても連絡もなく帰ってこないと佐々山さんから連絡が入ったのだ。
普段は佐々山さんには息子が帰宅し食事を済ませてから帰宅をお願いしていたが、行き違いになるといけない為、もうしばらく家で待機をしてもらい社内にいる妻に息子が帰宅していない事を伝えると息子に持たせている子供用の携帯の位置を確認したが表示はされなかった。
学校に行っている間は電源を切っていてそのまま電源を入れ忘れているのか、それとも充電が切れてしまっているのか。どちらにしても息子が今どこにいるのかわからない状況だ。
妻は落ち着かない様子で社長室の中をぐるぐると回っている。
そんな時に懐かしい番号からメッセージが入ったのだ。
[久しぶり。写真を送るわね]
その言葉の後に数枚の写真が送られてきた。
ソファに座ってお菓子を食べている息子の姿が映っている。
お菓子は着色料が嫌だと妻が絶対に買い与えないような毒々しい色をしたお菓子で、きっと初めて食べる色や味に夢中になっているのだろう。
息子の表情に緊張しているような表情には見えなかった。
さらにソファに座ってテレビをみる息子の横顔が映っている写真があり、その背景には見覚えがあった。
俺が2年前に“帰って”いた部屋のままだった。
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