1章 日記

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<1993年> 今の好景気は続かないと、高級な輸入インテリアや家具を販売している会社に勤めている彼が、リーズナブルな家具やインテリアを扱う店舗の展開を提案しそのプロジェクトメンバーとして先導し景気が翳った今も忙しそうだ。 中々デートをする時間も無い中、レインボーブリッジが開通してすぐにドライブに連れて行ってくれた。それ以降は夜にお互いの部屋で会ったりしていた。 28歳になり彼との交際は2年になった。まわりはどんどん結婚していってそろそろ彼との未来を考えていた頃、吐き気などの体調不良に見舞われ産婦人科を受診すると素敵な事実を医者から告げられた。 部長に昇進するとますます忙しくなった彼もクリスマスはいつも二人でお祝いしているからどこかに食事に行くのかもしれないし、行けなくてもどちらかの部屋でささやかにお祝い出来るはずだ。 その時にサプライズをしようと思った。 今年はきっとプロポーズをしてもらえるかもしれない。 付き合い始めた頃は受話器を持って寝落ちすることもあったが最近ではポケベルを使って簡単なメッセージを送りあってお互いの気持ちを確かめ合っていた。そんな中、クリスマスの一週間前に彼から食事に行こうと電話が来た。 目一杯のおしゃれをして一足早いクリスマス色で溢れかえった町で待ち合わせをした。 いつものように腕を絡ませると一瞬体をこわばらせた。なんとなくいつもと違うように感じたのは単に私の体が変わったせいだと思った。 レストランではなく室内は暖色のライトで落ち着きのあるカフェで、この店は私は初めてだが、彼は慣れたようにコーヒーとカフェ・オ・レを注文した。 ミルクでまろやかになったカフェ・オ・レは苦いものが苦手な私でもすんなりと喉を通すことができる。 いつもコーヒーを注文するたびに小さなミルクピッチャーに入ったミルクを彼の分までもらって入れていたが、メニューにカフェ・オ・レがある場合はいつも私のためにそれを注文してくれた。 このあとレストランとかにいくのだろうか? 予約とかしていてその時間調整? そんなことを考えながらカフェ・オ・レを飲みながらふと彼の手元に目がいった。 テーブルの上で固く手を組んで、せっかくの温かいコーヒーにも手をつけていなかった。 いつも堂々している彼が緊張してる? もしかして 期待で胸が一杯になっていく。
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