2章 目的

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15<麻奈> 手編みとかができればよかったけど、初めての編み物だと時間もかかりそうだし出来上がりが残念なものになりそうだ。 初めての料理の時も最後は慎が上手にオムライスを作った。 結局悩みに悩んでマフラーと皮製の手袋にした。 いくつあっても困らないしね。 そしてとうとうクリスマスイブになった。 ラストまで働くのも初めてでそれが慎と一緒というのがすごく嬉しい。 他のスタッフも気を使ってくれて、片付けをみんながやってくれるからと私と慎を先に返してくれた。 「お言葉に甘えて先に上がります」 慎がそう言って頭を下げると「メリークリスマス」と言って手を振ってくれた。 街路樹が光に溢れていて、ところどころに光の翼があって二つの翼の間に立つと天使のような写真が撮れるスポットがあり、慎が何ヶ所かで写真を撮ってくれた。 慎も撮ろうか?と聞いたけど「俺はいい。麻奈は可愛いから天使の羽がよく似合うよ」なんて真面目な顔で言うから照れくさくなった。 それでもXmasと書かれた場所で二人で写真を撮ってすぐに待ち受けに設定した。 慎のコートのポケットの中で繋いだ手は息が白くなるほどの寒さの中でとても暖かかった。 「そろそろ帰ろうか」 二人で歩いてるだけでも楽しくて幸せだけど、慎の部屋は二人だけの世界に浸れてもっともっと幸せな時を過ごせる場所になった。 「うん」 「コンビニのでアレだけどケーキを予約しておいた」 「本当!クリスマスを過ごすということだけで頭がいっぱいでケーキの事を忘れてた」 「じゃあよかった。ついでにチキンも予約してる」 「慎ってスーパー彼氏だね」 「何それ」 「最高で素敵で大好きって事」 そう言ってポケットの中の手をギュッと握ると同じように握り返してくれた。 手袋をプレゼントしない方がいいかなとか考えてから、北海道に帰省するときに私がプレゼントしたものを身に付けていてほしいからやっぱりいい選択だったと思う。 電車は程々に混んでいて二人でドアの前に立っていると窓に私と慎の姿が映っている。 慎の姿に見惚れていると「疲れたなら寄りかかっていればいい」と言って私の荷物を持っていない方の腕を私の背中に回した。 あの時、思い切って告白してよかった。
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