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「まぁ、服は鍛えようによってはサイズも変わるし、とりあえずパーソナルジムからね」
私は前もって目星をつけていた口コミの良いパーソナルジムをいくつか回り、必ず成功させてみせますと自信満々に言い切ったトレーナーがいるジムを速攻で押さえておいた。
「み、南野さんっ……」
しばらくしてサロンに戻ると、神々しい程に眩しい彼の姿が、私の目にスコーンと飛び込んできた。期待以上の変貌に言葉を失ってしまう。横で満足げにあれこれ話しかけてくるスタイリストの話が全く耳に入ってこないくらい、彼のその姿に見惚れてしまった。
「ど、どうですかね、東屋さん」
ハニかむ笑顔は今すぐにでもプロマイドにしたい程だ。
「良すぎ……良すぎよ南野さんっ‼︎‼︎ 素敵っ」
「あ、あははは、は、恥ずかしいなそんな、あはは」
「じゃ、次はジムに行ってみましょ」
「えっ、あ、はい。あ、お会計済ませてくるので少しだけ待ってて貰えますか」
「お会計?事前に払ってるわよ」
「え⁉︎ お、おいくらですか⁉︎ お返しします」
彼は焦りながら財布を出す素振りを見せたが、私は丁重にお断りした。
「これは未来への投資だから。あなたはお金の事は気にしないで。人生を変える事に集中して。光り輝く人生を絶対に取り戻すの」
「あ、東屋さん……なんでこんな僕のために」
今はまだ言えない。かつて愛した人だから、失って守れなくて後悔した人だから、今度こそは守り切りたいから。そんな事を今話したとしても彼は混乱するだけ。
いつか彼にも思い出して欲しい。光を生み出すアステリアとして時を共にした事を。
「そうね、それはマネージャーだから。未来のアイドルにお金を落とすのは当たり前の事よ」
私はサラッと彼の疑問に答えると、また彼の腕を掴みジムへと引っ張って行った。
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