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「お願い、出てっ‼︎‼︎」
どのくらいの間コールし続けただろう。向こうからすれば、恥をかかされた相手からの鬼電なんて迷惑でしかないだろう。それでも私は、しばらくの間粘り強くかけ続けた。今回こそは諦めない。
プルルル
「はい……南野ですが」
「あ、私っ、東屋です‼︎‼︎ ちょっと話せません?」
「いえ、僕はもう……」
お願い。このまま闇に飲み込まれないで。あなたの光は私が守り通す。
「お願い。もう一度チャンスを頂戴‼︎‼︎」
「でも、どう考えたって……」
無理がある。年齢的にもポテンシャル的にも、アイドルの素質はどこにも持ち合わせていないと、彼は言い切った。エネルギーに満ち溢れた若者は星の数ほどいる。夢を見ている歳ではないのだと、彼は私との会話を終わらせようとした。
「待って、切らないで‼︎‼︎ 私には分かるの、私には見えるのっ‼︎‼︎ あなたの光が‼︎‼︎」
「や、やめて下さい……。流石にそれは、その……」
「お願い、私、諦めたくないの。あなたのその光、絶対に輝かせてみせるからっ‼︎‼︎」
「何言ってるんですか。この間、失笑されたの忘れたんですか」
「それは……そ、そんなの関係ないわっ‼︎‼︎ 諦める事を考えるよりも、自分を変える努力をしてみない?」
「えっ?」
「一生付き合うから、あなたが変われるまでずっと」
「……」
「お願い、もう一度チャンスを頂戴。あなたを輝かせるまで、私は諦めない」
「あ、東屋さん……」
セオ、あなたの想いは私が引き継ぐから。だから安心して。私が必ず、あの光を蘇らせる。
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