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「ごめんごめん、ちょっと遅くなっちゃった」
彼を拾い、早速事務所へ向かう。可愛げもない欠伸をかましながらハンドルを握っていると、彼が申し訳そうに声を掛けてきた。
「橙子さんすみません。朝早くから僕のために。お疲れですよね」
「いいのいいの。これがマネージャーの仕事だから」
「……」
あれ、彼が急に黙り込んでしまった。私、何か気に触る事言ったかしら。
「奏多、どうかした?」
「マネージャーって、ここまでしてくれるものなんですか」
正直言って、どこのマネージャーも抱えているアイドルを売り出すためなら、身体に鞭を打ってでも動く。
送り迎えにスケジュール管理、サイトの運営にグッズの検討、ライブへの同行にイベントの企画と売り込みの営業。体力気力ともに必要な仕事だ。
ただ、彼の所属するグループは多国籍という事もあって、それぞれの国でのソロ活動にも力を入れたいという事務所の意向があるため、メンバーそれぞれにマネージャーがつけられている。
通常、グループの管理はマネージャー1人に任される。その点私は彼だけに集中すれば良いから、まだ楽な方だ。
「マネージャーはね、アイドルを売り出すのが仕事だから」
「……」
「私、絶対に奏多を輝かせるっ。絶対に成功させるっ。世界一のアイドルにしてみせるっ」
「橙子さん……」
あなたの光は私が守る。そう思って意気込みを話したのに、彼の纒う光が何となく弱いのは気のせいだろうか。
「奏多こそ疲れてるよね、大丈夫?」
「……はい」
どうも気になる。やはり、光が弱い。
私はこの時、何故彼の光が弱まっているのか、全く理解できていなかった。
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