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今朝の目覚めは最悪。黒いもやに追いかけられて、覆い尽くされそうになった所で目が覚めた。
「不吉な予感……」
彼の光は弱まっているし、まさか何らかの闇が広がろうとしているのかも。売り出し中のノリに乗っている時にこんな夢を見てしまうなんて、正直言って胸糞が悪い。
「切り替えなきゃ」
冷や汗を熱いシャワーで流し、朝の身支度をしている最中、携帯がけたたましく鳴り響いた。
「はい、東屋です。えっ? 何ですか?」
朝っぱらから早口でまくしたてられ、言葉が上手く耳に入ってこない。何やら事務所からバタバタしてそうな音が漏れ聞こえてくるし、一体何なのだろう。
彼の送迎は他を回すから、お前は早く出社しろと命令され、私はドギマギしながら事務所に車を走らせた。
「な、何これっ⁉︎」
週刊誌の見出しに絶句してしまった。“時を駆けるスーパーアイドル、マネージャーの女と熱愛。ホテルで密会熱い夜”
黒く目隠しされているものの、見出しに“マネージャーの女”とデカデカと書かれているのだから、そんなちょっとした気持ち程度の目隠しなんて何の意味もなさない。
「東屋、説明しろっ‼︎‼︎」
「ち、違うんです‼︎‼︎ 誤解ですっ‼︎‼︎」
私は週刊誌に撮られたあの日、どこで嗅ぎつけたのか彼の自宅マンション近くをうろつくファンを見かけたから、人目のつかない遠くのホテルまで彼を送り届けたのだと必死に弁解した。
「そういう事か……。全くハイエナみたいだなあの連中は。早く手を打たないとマズイぞ」
ちょっと考えればガセネタだと分かりそうなのに、一部の熱烈なアイドル崇拝者にはそのガセが通じない。
このままでは、火消しできなくなってしまう。せっかくスーパーアイドルとして駆け上り始めたのに、炎上なんかしたら一気に転落まっしぐらだ。
頭を抱え真っ青になっている私の元に、長い黒髪を靡かせた女がハイヒールをカツカツ鳴らしながらやってきた。
「大丈夫よ、私に任せて」
「さ、三枝さん⁉︎」
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