最愛の息子

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 港の近くにある質素な建物内でのこと。 男の声「……使い魔が記録していた映像を見た。……僕が見ていても、わかった。……不本意な、戦いだったろう……」  ベッドに寝たままの女はそのまま返した。 「…………。来たのね……あなた……。出港前に……間に合ったわよ。……。……こうなるのは……運命だったのよね……」 あなた、と呼ばれた男「……君が真のちからを発揮したら、あんなものではないだろう。……それは、わかる、わかる……だが……」 女「いいことを言うわ、ウィリアム先生。……実の息子をこの手にかけれる、ものかしら……」 ウィリアム先生、と呼ばれた男「…………ああ」 「……あの子は、どうしているの……? それだけが気になってたの……」  ここで言葉を切った女は首だけを動かし、相手を見た。  海鳥の鳴き声が頭上から響き渡る。 「……。……頭を抱えて……部屋に閉じこもっている。……そうなるだろう。自分でも自分がやったことを……どう考えるといいのか、悩んで苦しんでいる……僕だって同じだ。……すまない。国の決まりでそうなってはいるが……君には、すまなく思ってる……あの子にも……。どうして、こんなことに……なるのか……」  怒りと悲しみの涙をこらえている男へ女は乾いた声で返した。 「……閉じこもってる、ですって? ふっ、うふふふ、ウィザードになった際は、私も黒き塔に閉じこもってた。これからどうするといいのか、わからなくなって……。あの子って……私と同じね。……あのとき……あなたは、あなただけは……人殺しの私に会いに来てくれたけど。……。あの子、本気で戦いをしかけてきたのよ。ほんのわずかも手抜きはなかった。……あなたに似て、賢い子。……全力で戦わないと、私には、ママには到底かなわない……そう感じたのね。……あぁ……ウィリアム……エドワードになら、ウィザードを任せても平気よ。あの子は……まだまだ強くなれる、私たちの子は。………。……あの子のママ……私の命は、これまでのよう、ね……」
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